持ち家か賃貸か

僕は下手ながらも将棋を楽しんでいるのですが、将棋界では、相手側に回って盤面を眺める様子を「ひふみんeye」と呼んでいます。レジェンド加藤一二三さんが、相手が席を立ったすきにときどき繰り出した手で、もちろん、敬意を込めてこう表現するようになりました。立つ位置が変われば見える景色が異なるという経験は、決して珍しいことではありませんが、「持ち家か賃貸か」という使い古された問いについても、毎月の支払額ではなく、作りの丈夫さという異なる観点を取り入れると景色が異なります。

一般的に、分譲住宅は賃貸住宅に比べてしっかり作られていると言われます。住む立場から見ると、持ち家には長く住むので、多少高くても構わないと丈夫な作りを歓迎し、賃貸は短期で引っ越すので、その期間だけ機能が持てばいいので簡便な作りでも構わないと考えます。

賃貸住宅に投資する立場から見ると、住む側が簡便な作りを受け入れる状況でわざわざコストをかけて丈夫な作りにしようとは考えません。

こうした見方を整理すると、どの程度の期間、資産として使えるモノであるかという点で、分譲住宅と賃貸住宅は全く別物だと言えます。専門家ではないので間違っているかもしれませんが、分譲住宅は40年から50年、賃貸住宅は20年から30年程度を想定したものなのでしょう。

冒頭の「持ち家か賃貸か」という問いに戻ると、答えは、どの程度の期間住み続けるかによって答えが異なるものであり、決して横並びで比較してはいけません。住宅ローンと家賃とを比較することは、りんごの価格とみかんの価格を比較しているようなもので、モノが違うので価格の比較は意味をなしません。

さて、では持ち家(分譲住宅)に絞って、価格を掘り下げたいと思います。

平均的な家族構成を想定した分譲住宅の間取りは、2LDKから4LDK、広さで100㎡内外でしょうか。このボリュームゾーンに対しては、政府の経済対策が湯水のように注がれていて、まずはその評価が必要になります。年収の3割に相当する返済が向こう35年続いてもローンをつけてくれるという施策は、長く住むことを決めている購買層にとっては非常に魅力的です。しかし、この施策が、長く住むことが決まっていない購買層を惑わせているとすれば、分譲住宅への需要がバブっていることになり、分譲住宅の価格が高止まりしている(或いは、同じですが、価格ほどの品質を備えていない)ということになります。

即ち、ボリュームゾーンの分譲住宅は、そこまでの丈夫な作りを必要としない購買層の需要を呼び込んでしまっているので、価格が高止まりしているということになります。改めて、最初の問いである「持ち家か賃貸か」に対しては、分譲住宅の価格が高止まりしているという分析のもとで、賃貸が良いという結論になりました。

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