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財務の仕事ー知識と経験の再検証

「過而不改、是謂過矣」過ちて改めざる、これを過ちという。(論語)

 

私は過去、大手商社、ベンチャー企業、外資系企業の財務部門で様々な経験を積んできました。その間、英国にある大学院にてMBAの学位を取得しました。客観的に見て、企業財務の専門家といえるだけの経験はあるのかもしれませんが、過去の経験や知識はすぐに古くなってしまうくらい社会の変化が早いので、なんとか遅れないように知識のアップデートを続けています。

今までの知識の棚卸しをしつつ、企業財務に関わる話題をエッセイの形で書き連ねました。専門的になり過ぎず、一貫してわかりやすい言葉で書くことを心掛けています。内容に関して、異なる見方やさらなる議論が必要な部分が多々あると思います。このエッセイの趣旨に鑑み、私自身大いに議論に参加し知識の幅を広げたいと思っております。

  • 2023-08-05
  • 2023-08-05

サンク・コスト(Sunk Cost)の話

投資の評価方法を勉強すると、サンク・コストという言葉によく出くわします。直接的には過去に使った費用のことを指しますが、投資評価においては、過去に使った費用は採算上考慮すべきでないという文脈でよく見かけます。 サンクコストとは、すでに支出されて回収できない費用のことです。経済学や経営学では、意思決定に影響しないコストとして扱われます。サンクコストは、過去にかけた時間やお金などが正しい判断を妨げること […]

  • 2023-01-15
  • 2023-09-17

デジタル通貨について

ユーロがデジタル通貨の導入を割と真面目に検討しているらしい。ユーロという通貨は、今年から採用されているクロアチアを含め20の国家で用いられています。1999年に始まった通貨統合の試みは、2008年のリーマン・ショック、2015年のギリシャ危機を乗り越えて、次のステージを模索している。通貨発行権を有する中央銀行は、決済機能を提供するほか、金融政策によって物価に対する相対的な通貨価値をコントロールし、 […]

  • 2021-03-07
  • 2023-09-17

資本金の意義

コロナ禍で減資に踏み切る上場企業が増加しているようです。ほぼ確実に課税回避が目的です。資本金が1億円を超えると、繰越欠損金に欠損金の50%という上限が付され、課税所得の多寡にかかわらず資本金の0.5%の法人事業税が課される(外形標準課税と言われます)ことから、減資によってこれら税制上の「デメリット」排除を狙っています。 日本経済新聞2021年3月7日朝刊総合5面より いうまでもなく資本金は課税基準 […]

  • 2021-02-28
  • 2023-09-17

長期金利が上昇しています

バイデン政権が2兆ドルの経済対策を打ち出したことを契機に、米国10年債の利回りが0.5%水準から1.6%まで上昇しました。各国で集団免疫獲得によるコロナ禍収束のシナリオが漸く現実味を帯びてきたことから、失業による需給ギャップを許容する経済運営から、雇用正常化に舵を切りました。失業が許容されると、企業は一時的に利益を出しやすくなりますから、株価は一時的なバブル状態を呈していましたが、徐々に落ち着いて […]

  • 2020-12-13
  • 2020-12-13

全数検査の罪

品質向上を掲げている組織では、逸脱が生じたときに「全数検査」によって再発防止を図ります。全数検査は、品質向上という目的に対して、一見、万能に見えますが、場合により、とんでもないノイズを生じさせることに注意が必要です。数学的には「条件付き確率」でカバーされます。 ここでいうノイズは、不良品ではないのに、検査で「不良」と検出してしまう数を表現しています。検査が確実に不良品を検知し、確実に良品を検知する […]

  • 2020-08-29
  • 2020-08-29

外資系企業における問題解決のプロセス

論理的思考を持っている方ほど問題解決のプロセスというものに興味がないかもしれません。特にプロセスを意識せずとも、妥当な解決策に辿りつくからです。しかし、一般人には簡単なことではありません。いくつもの問題を抱えるマネージャーにしてみれば、一般人でも妥当な解決策を導くことができる魔法のプロセスを組織に埋め込んでほしいと思うでしょう。ということで、問題解決のプロセス構築に対する需要は大変高い。 日本を代 […]

  • 2019-06-24
  • 2023-09-17

外資系企業へ転職した日の記録

以前、こちらに外資系企業への転職を考えている方へのメッセージをしたためました。若い頃ならリスクを理解したうえで転職という決断を下すことができても、年を重ねるとどうしても守りに入ります。特に、管理職として転職するときには、それなりの覚悟が伴うものです。数年前、私自身が外資系企業の管理職として転職した日に書いたメモを読み返しますと、そのときの覚悟がにじみ出ていて、今でも新鮮な気持ちになります。 自分自 […]

  • 2019-06-11
  • 2020-08-01

ビジネス・ケースの基本

ビジネス・ケースを評価することは財務部門の最も重要な仕事であるにもかかわらず、財務部門がきちんと関与できている例は多くないと感じます。会計基準に基づくPL・BSインパクトを示すことももちろん大事ですが、プロジェクトのリスクやリターンを可能な限り客観的に数字で表すという財務分析がきちんとできているかどうかは疑わしい。私の経験でいえば、経営者のストーリーに沿うように「数字を作る(cooking num […]

  • 2019-05-30
  • 2019-05-30

コスト削減の方法

コスト削減という課題に対して確立した確実な手法があればよいのですが、そういった便利なものに巡り合ったことはありません。しかし、財務部門にはコスト削減という課題に対して説明責任がありますから、課題への対処方針を明確に示さないといけません。今までの私の経験から、説明責任を果たす上で適当なアジェンダについて纏めてみました(特に工場組織で重要な効率改善によるコスト削減は除いています)。 役割と責任の重複を […]

  • 2019-05-24
  • 2019-05-30

オペレーティング・モデル

組織設計に先立って、重要業務やプロセスをどの機能が担うかを明確にしたものをオペレーティング・モデルといいます。現状の組織図にとらわれることなく、業務を効率的に回すあるべき姿を考えるときにこの用語がよく用いられます。外資系企業を例にとると、会計サービスをどこかの国で集約するかとか、人事サービスを専門会社にアウトソースするとか、カスタマーサービスの責任をどの部門に持たせるかなどが、オペレーティング・モ […]