ナイチンゲールの偉業

サイモン・シン(Simon Singh)というサイエンス・ライターの著作が好きで、訳されているものはすべて読んだ。これは彼の著作のひとつ、「代替医療解剖(Trick or Treatment?)」に紹介されていた、フローレンス・ナイチンゲールに関するとても興味深いストーリーです。

1800年代半ばのクリミア戦争で、ナイチンゲールは従軍看護師として、トルコのスクタリ病院で働くことになります。赴任当初、収容された兵士の死亡率は43%に達していましたが、彼女の献身的な働きが奏功して、半年もたたないうちに死亡率は2%まで改善しました。後に彼女はクリミアの天使と呼ばれ、祖国である英国に英雄として迎えられました。

ここまでのストーリーには何の面白味もありません。興味深いのはここからで、彼女は死亡率低下の原因を、データを解析して論じ、衛生状態の改善がその要因であることを統計的に証明したのです。この他、訓練を受けた看護師と受けていない看護師では患者の回復に優位に差が出ることや、病院で出産するより家庭で出産するほうが安全であること(当時、病院の衛生状態は良くなかった)など、ことごとく統計的手法を使って主張しました。しかも、説得にあたっては、データをわかりやすい絵やグラフにしたといいます。

当時の女性の地位、看護師の地位は、推して知るべしです。だからこそ、彼女は科学的根拠で武装して、医療変革を訴えました。彼女の主張のおかげで陸軍医学校が設立され、看護婦養成学校が設立されるに至ります。すべて、科学的根拠が評価された結果です。彼女はといえば、英国王立統計協会の初の女性会員に選ばれ、アメリカ統計学会の名誉会員にもなっています。

フローレンス・ナイチンゲールといえば、献身的な看護師だったという見方が大半だと思いますが、「科学的根拠に基づく医療」を唱えた初期の人であり、一科学者として医療分野に計り知れない貢献をもたらした人なのです。

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