Global Techで学んだ経営思想

私はいくつかの転職経験を経て、現在米系EC企業で勤めています。Technologyが経営のCore CompitanceになっているGlobal企業ですが、Techそのものよりその経営思想に価値を感じる企業です。外部環境も内部環境も変化が早く、特にAIが仕事を変えている昨今、私のような人間がどこまで必要とされるかわかりませんが、管理職として節目の4年を終えるにあたり、私が最も価値を感じる3つの経営思想を纏めておきます。

Working Backwords

最も大きな学びは、常にお客様の求めるものが何か、それだけを何の制約を考慮することなく捉え、それを実現できている状況から遡って、今、何をしなければならないかを考えるというWorking Backwardsという思想です。生活必需品を注文から30分以内にお届けするという状態がお客様の求めていることだとすると、それを3年後に実現するために今から何をすればよいか、そのためにどんなリソースがどのくらい必要かなどを逆算して、動き出します。ここで、大事なことは、最初に人や技術や資金などの制約要因を取っ払って考えるということで、これはなかなか難しい。例えば、3年後の売上を3倍にするとか、AI領域に1,000億円の投資を3年以内に実行するとか、そういったプレゼンテーションをよく見ますが、これらは売上目標や資金という制約要因にとらわれていて、且つ、お客様が求めるものが何かという点に訴求できていないので、これらはここでいうWorking Backwardsとは言えません。たまたま、AIデータセンターとか衛星事業とか規模の大きな投資案件が目につきますが、それらは当該事業部門がお客様が求めるものを追及した結果、実行している投資であり、社内のあらゆる事業部門が規模の大小にかかわらず、それぞれのお客様が求めるものを追及して事業計画を構築し実行しています。

Two Way Doors

実行したら戻れない意思決定をOne Way Door、いつでも戻ることができる意思決定をTwo Way Doorといいます。One Way Doorの意思決定には時間をかけますが、Two Way Doorの意思決定には時間をかけず、まずやってみて結果を追いかけながら、ダメならやめるというやり方で事業を進めます。Two Way Doorだからといって、いい加減に事業を進めているわけではなく、立ち上げたその日から非常に細かい粒度で成果をトラッキングし、少なくとも週次で状況をレビューしながら、少しずつ着実に成績を伸ばしていきます。一方、予想された成果がなかなか見えない場合、撤退する意思決定も早く、だらだら進めることはありません。 意思決定におけるこのメリハリと、どんな事業でも細かい粒度で成果をトラッキングする経営管理体制はセットです。ですから、新事業立ち上げにはそれなりに経営管理に必要な人員が必要になり、厳しい人員数コントロールがありながらも、それらへの投資は惜しみません(但し、特に米国では採用さえTwo Way Doorの意思決定だと捉えている節がありますから、Hire/Fireの環境が異なる日本の組織ではいつも大きな議論になります)。

Speed

上述のTwo Way DoorsもSpeedをサポートする経営思想のひとつですが、この思想はむしろ、お客様が求める根本的な価値に基づいています。ここでいうSpeedは、いいものや役に立つサービスは早く手に入れたいというお客様の普遍的な要求を表現していて、そのための仕組み作りに日々奔走しています。すべての仕組みは拡張可能(scalable)でなければならず、人海戦術だとか事業拡張に資金がかかり過ぎるとか、そうした状況は避けないといけません。一般的にいってバランスシートを大きく使うような事業は、シェア獲得において資金が制約になりSpeedに寄与しないので、CCC(cash conversion cycle)にこだわりながら、且つ、Asset Light状態を心がけています。

ところでここ数年のAI分野での投資は、Global Tech1社あたり数10兆円という規模感になっており、一民間企業の存亡を危うくするサイズになっています。AIの進化が生産性にもたらすメリットには疑いようがなく、当面需要は増す一方でしょうから、それらの需要からBackwardsで投資を正当化していると考えられますし、同時に、その需要をさらに刺激するようなサービスを自ら提供して、One WayからTwo Wayへとリスクを減らしています。AIサービスのユーザーである私から見ても、AIを使わない日はなく、タスクの処理時間が圧倒的に短くなっていることを実感しています。このあたりは、別のブログに纏めようと思います。

 

Global Techで学んでいることを改めて纏めますと、今までの経営経験では決して得られなかった大事な経営思想であることを認識しています。経営の教科書があるとすれば、制約要因を考慮した慎重な意思決定、精緻な事業計画、株式や融資によるファイナンスなどが説明されているのでしょうが、経営の現場では全く異なる価値観で意思決定しているという不思議な状況です。

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