見える化の実践

オフィスにいるとき、とてもよく耳にしながら、その意味が分からない言葉のひとつ。人それぞれで、理解が異なります。数字の羅列をグラフ化することを「見える化」と捉えている人もいれば、表を印刷して壁に貼ることを「見える化」という人もいました。Wikiには「見える化(みえるか)とは、企業活動における活動実態を具体的に分かるようにすることである」とあります。

私は、某外資系企業で、「見える化」を学び実践する経験に恵まれました。トヨタや他の優れた日系企業で勤めた方から見ると恥ずかしいレベルの理解ではありますが、それでも「見える化」の効果を大いに認め実践している信奉者です。「見える化」には大きく3つの狙いがあると思います。

改善のDNAをチームに埋め込む

いろんな環境で仕事をしてたからこそ感じることかもしれませんが、スタッフの皆さんの素質は変わらないにもかかわらず、強いと感じるチームと弱いと感じるチームがあります。「弱い」というのは、必ずしもミスを頻発するというわけではなく(それも「弱い」の範疇ですが)、ミスやトラブルの根本原因を叩くことなく、回避策ばかり導入している状態を言います。回避策が入っているので、一見、スムーズに仕事が流れているように見えます。しかし、効率の悪い状態がずっと続きます。他方、「強い」というのは、ミスやトラブルの根本原因を追究して、時に組織を超えてそれを叩き、また、改善のための創意工夫や試行錯誤を良しとするチームです。Winning Cultureとか改善のDNAとかいう言葉がしっくりきます。

改善のDNAをもった強いチームを作る第1歩が見える化です。頻発するミスやトラブルに不平不満を言うのではなく、まずそれを数値化します。例えば、決算が期限どおりに締まらないという問題について、どの作業にどれだけ時間がかかっているのか数値化します。チームの雰囲気が悪いという抽象的な課題に関しても、まず悪さ度合いを10段階で数値化します。数値化されると、これをどうしたら良くできるかを皆で考えます。アイデアが出たら実行して、成果が出なければ見直してという繰り返しが定着すると、数値がだんだんと良くなります。このサイクルを定着させるまで多少の(かなりの!)エネルギーを使いますが、定着させれば、常に改善を志向する強いチームになります。

ステークホルダーからの信頼を得る

数値化したものは、必ず定期的に計測して、それをグラフ化して皆の目につくところに掲示します。改善が進んでいるかを示すRAG(Red-Amber- Green)シグナルを付けておくと、より分かりやすい。PCに入れたまま、プロジェクターで映すことは見える化ではありません。チームメンバーに限らない社員の誰もがアクセスできて、ひと目で改善が進んでいるかどうかがわかる状態が見える化です。掲示も何もない綺麗で静かなオフィスは、一見、皆が効率よく仕事をしているように見えますが、本当に効率が良いのかどうかあやしいものです。ガヤガヤといろんなところで数値改善について話し合いが起こっているほうが、よほど安心できます。

チーム内にRed状態のグラフが多いとき、皆の見えるところにそれらが掲示されると、マネージャーの心情としてはそれらを隠したくなるものです。まして、マネジメントがチームのそばを通って、Red状態の問題点について質問したりすることがあったときには、チームの評価が下がると思ってしまいます。しかし、グラフが定期的にアップデートされている限り、決してRed状態を問題視しません。むしろ改善のDNAが定着している事実をポジティブに受け止めます。もちろん、Red状態がいつまでも改善していないと、マネージャーは早晩交代するでしょうが。

ベストプラクティスにお墨付きを与える

問題点を数値化して改善動向を追いかけていると、稀に素晴らしい改善に出会います。見える化されていない状況だと、その改善は「大きく改善できました」という曖昧表現で主張され、多くの改善事例に埋もれてしまいますが、見える化によって改善が客観化され、しかも多くの人の目によって認められることにより、素晴らしさにお墨付きが与えられます。

そうした事例を成し遂げた方やチームは誇りを感じるようになり、仕事へのますますポジティブな取り組みに繋がります。何より注目されることによって、改善の道筋が定式化され、他事例に波及する可能性がでてくることが期待されます。

私もまだまだ実績不足ですが、どこで働いたとしても見える化を実践して、強いチームを作ることを心掛けていきます。

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