自閉症のお子さんを持つご家族へのエール(後編)

前編に引き続き、 自閉症の息子が特別支援学校高等部を晴れて卒業し、社会人となるこの機に、自閉症のお子さんの子育て真っ最中にあるご家族へのエールを込めて、息子の歩みを、一旦、振り返ってみようと思います。

中学生時代

普通の男の子であれば、反抗期になってそろそろ親と一緒にいることを嫌がる年齢ですが、彼にはそういう時期がありませんでした。はっきり挨拶ができるようになり、社会のルールをきちんと守る、素直な子になって、問題を起こすことも少なくなりました。相変わらず、休日には一緒に山登りをしたり、公園をランニングしたり、自転車に乗ったりと、彼と一緒に、僕も楽しく過ごしました。周囲の方々の理解もありましたので、家族に障害者がいることで何か不都合を感じたことはありません。

ただ、次男の小学校で授業参観があったとき、自閉症の長男を一緒に連れていくと、次男があからさまに嫌な素振りを見せたことを覚えています。次男に、立派な兄弟がいることに誇りを持てと言いたかった(言ったかもしれない)ですが、まだ小学生の次男には、酷だったかもしれませんね。

高校生、そして社会人へ

特別支援学校高等部へ進学するタイミングで、また引っ越しました。新しい環境は、太平洋に面した海沿いで、山からは少し遠くなりましたが、近くに海岸沿いのランニングコースやプールがあるところでした。相変わらず、休日には彼を運動に連れ出しました。知恵遅れとはいえ体力有り余る伸び盛りの高校生ですから、次第に運動することがルーティンになり、地域のマラソン大会に参加したり、水泳プログラムに参加したりするようになりました。

ランニングは10キロを1時間ちょっとで走ります。トレーニングパートナーが僕なので決して早くはないですが、20キロくらいは普通に走ることができます。水泳は、クロールのような泳法で2キロくらいは軽く泳ぎます。長く走るとか泳ぐとか、数年前には考えられませんでしたが、継続していると吸収していくものですね。今年は一緒にフルマラソンに挑戦するつもりですが、僕はともかく、彼は完走できるでしょう。楽しみです。

そして、最近は次男も成長したのか、長男を学校に連れて行っても嫌な顔ひとつしなくなりました。

彼はこれから社会に出ていくわけですが、社会からお金をいただけるような価値を彼が社会に対して提供できるかというと、それははっきりノーです。世の中の厳しさは僕がよく知っています。就労訓練という名目で補助金が出る間、彼は仕事を与えられるのかもしれませんが、それがなくなると雇われることは難しいでしょう。だから、彼ができる、社会に役立つことを何か見つけてあげたい。

一度、車椅子生活をしていらっしゃる方、または、目の不自由な方の移動を助けるという試みを考えたことがあります。事故が起きたときの責任をどうするかという問いにうまく答えられず、トライすることなく簡単にあきらめてしまいました。専門的なトレーニングは必要ですが、少しでも社会の役に立てるのではないかと考えています。目の不自由な方の伴走もできるかもしれません。社会に出ていく新入社員の皆さんと同じく、社会人になったからこそ、社会から求められる立派な歯車になれるよう、新たなトレーニングが必要なのでしょう。

最後に

お子さんが自閉症だと診断された親御さん、特に、診断されて間もないころは、健常者のお子さんたちとどうしても比較して、辛い思いをなさるかもしれません。原因はわからないとはいいながら、何か思い当たることがあって、ご自身を責めることがあるかもしれません。今の医学では治らないなんていわれたら、それこそお先真っ暗という状況でしょう。

ところが、息子が社会人になる手前でこうして振り返ってみると、真っ暗どころか、とても眩しい毎日を家族にもたらしてくれたことに気付きます。健常者のお子さんがいらっしゃるご家庭より幸せだとか不幸だとか、そんなこと一切考えません。

ひとつだけ、ご両親にアドバイスがあるとすれば、通常よりは当然子育てに手がかかることから、自分たちが壊れないようにすることが大事です。外部サービスを使うなり、近所やご実家のサポートを受けるなりして、しんどくなったら、積極的に子育てから離れてリフレッシュしてください。決して抱え込んではいけません。

おそらく、今、悩んでいらっしゃる親御さんもお子さんが18歳になったときに振り返れば、僕と同じ気持ちになっているでしょう。ご家族で楽しい思い出をたくさん作ってください。

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