世界的な失業率低下傾向について

“Unemployment numbers best in 51 years. Wow!” tweeted Donald Trump, America’s president, last month. Theresa May, the British prime minister, bragged in February that “employment is at a near-record high and unemployment at a near-record low.” The month before, Scott Morrison, Australia’s prime minister, crowed that “more than 730 jobs were created every day last year under our government.” Around the same time his Japanese counterpart, Shinzo Abe, let it be known that “the employment rate for young people is at a level surpassing all previous records.” Hence the swagger of politicians, who believe that they are special. But they are not. Jobs abound because of forces that largely have nothing to do with them.

The Economist – May 23rd 2019

主要先進国で失業率が改善しています。日本の2018年の失業率は2.4%でした。米国は直近で3.6%という水準まで下がっていています。各国首脳は自らの実績をアピールしていますが、掘り下げるとどういう背景があるのか、英エコノミストの記事から紹介します。

景気サイクルの影響

景気にはサイクルがあるので、世界的に景気が冷え込んだ2008年のリーマン・ショックから10年が経過し、加えて、その間に主要各国で行われた金融緩和策が奏功したことは確実です。米国でいえばこのほか、ポピュリズムの台頭によって企業が雇用削減をしにくくなっているという理由もあります。また、この間の景気回復を牽引したのが、比較的労働集約的なサービスセクターであることも、失業率が改善した要因です。

社会構造の変化

2013年10月にIMFが発表したの向こう5年間の経済見通しによれば、経済成長率が2.4%、失業率が6.9%というものでした。実績は、経済成長率が予測を下回ったにも関わらず、失業率は改善しています。これは、IMFの経済予測モデルが人口動態や技術環境の変化を取り込んでいなかったことによるものだと言われています。

失業率はスキルのない若者層で高く、熟年層で低いという傾向があります。数年の間にそれらの割合が変わることで数字の前提が変わってしまい、熟年層の占める割合が増加傾向にある昨今では、失業率が低く出るようです。ある研究によれば、米国の2000年頃の人口構造と今日のそれが同じであれば、今日の失業率は0.5%ほど高かったとのことです。

また、インターネットの普及により失業者による採用広告へのアクセスが各段に容易になってきたという事実も失業率低下に寄与しています。雇用者側もそういったチャネルを積極的に活用することで人材獲得のコスト(時間)を下げることができています。イタリアにとってはあまり嬉しくない事実でしょうが、「インターネットでの職探しがさほど一般的でない国では失業率が高い」という相関が確認されています。

政策の効果

女性の社会進出は各国で取り組まれている課題です。また高等教育の充実も就職にはプラスです。これらのほか、労働組合の力を弱め、給与を業績に応じて弾力的に増減できるようになってきていることが雇用維持に貢献しています。失業保険が縮小されてきていることから、労働者側も給与条件が希望通りでなくとも職に就くようになってきています。

この50年、技術進歩は、新たな雇用を生み出すことで、古い技術から押し出された失業を吸収してきました。向こう50年を俯瞰すると、AIが仕事を奪う分野はあれど、新しい分野で雇用が生み出され、失業を吸収するのかもしれません。

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