トレジャリーの役割

トップの信頼を得て会社の資金の出し入れに権限を持つ人は、江戸時代の商店組織になぞらえて「金庫番」といわれます。英語にはトレジャラー(Treasurer)という名詞があり、おそらくはこの「金庫番」と同じ役割を指します。どこの国でも、商売には金庫番の役割が不可欠だったんだろうと推測します。

トレジャリーは、会社の中でトレジャラーの果たすべき役割を組織として担います。具体的な役割について教科書的な解釈があるわけではありませんが、商店における金庫番という役割を漠然とイメージすれば、この機能には会社のお金を徹底的に守ることが求められています。私なりの解釈は「財務リスクの徹底回避」です。

財務リスクには、流動性リスク、金利リスク、為替リスクが含まれます。流動性リスクとは、決済に必要な資金を準備できないリスクです。金利リスクとは、金利水準が変動したときに予期せざる損失が生じるリスクを指します。為替リスクは、為替水準の変動に関連するリスクです。

私が「トレジャリーの役割は財務リスクの徹底回避です」と解釈している理由は単純で、トレジャリー以外にそれらリスクの回避を考える部門が会社にないからです。他の部門は、財務リスクを増やす方向で事業を組み立てます。長期投資は、流動性リスクに影響しますし、金利リスクにも影響します。海外との取引は為替リスクに影響します。トレジャリーが財務リスクの回避を考えなければ、リスクが積みあがってしまい、会社のお金を守ることが難しくなります。従って、トレジャリーだけは、ひたすら財務リスクの回避を考えるべきだという信念をもっています。

社長の立場を想像すると、事業がうまくいかず金庫のお金が減ってしまったときには、将来の成功のための先行投資として已む無く納得もできるでしょうが、トレジャリーで資金運用に失敗して金庫のお金が減ってしまったときには、全くのムダ金だったとやり場のない憤りに苛まれるでしょう。金庫番は、目の前の人参に目もくれず、ひたすらリスク回避に徹し、事業の失敗以外の理由でお金が減らないよう、頑なに職務を遂行して融通が利かないくらいがちょうど良いのです。

とはいえ、次回以降、その中でも面白いトピックを取り上げて紹介していきます。

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