DXという流行り言葉を至るところで見かけますが、歯科クリニック運営をネタにした記述もよく見られるようになっています。試しに、AIに聞いてみると、歯科DXには5つのメリットがあるようです。①診療の効率化、②診断精度の向上、③患者体験の向上、④コミュニケーションの改善、そして⑤医療データの長期管理です。
ベースにはデジタル環境が得意とする情報の一元化、ID化によって得られるメリットがあります。ただ、このメリットはより複雑な経営環境で威力を発揮することから、医師先生と衛生士さんと助手さんで運営しているような小さなクリニックでは、むしろコスト増が勝ってしまうような気がします。ひとつだけ、大きなメリットが期待できると思うのは③の患者体験の向上です。患者さんにとって、予約を取りやすく、予約変更しやすく、決済がキャッシュレスで、過去の診療履歴を確認でき、さらに、定期的に検診をリマインドしてくれるようなツールは、確実に差別化になります。
治療の腕の方が大事だと仰る先生は正しい。実際、地域の患者さんがついているクリニックは、むしろ新患の抑制を行わないと、お得意様をサポートできない状況にあると聞きます。ですから、DXはあくまで患者さんにとって副次的なメリットであり、これを重視するかしないかは、医師先生の経営方針によるところであります。
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こうしたことを改めてしたためたのは、歯愛メディカルさんの決算に触れたことがきっかけでした。資本集約が大きく遅れている歯科業界で、ネット通販事業を立ち上げ上場している会社です。業界を変革しながらまずまずの利益を出している経営は大したものです。しかし、最近の決算状況を確認して、物流センターを立ち上げるために100億円規模の大規模投資を行っているところに驚きました。結局、卸さんと同様、物流機能を売りにしていくという方針が見て取れ、ちょっと残念に感じました。ネット通販大手が物流機能を貸し出すようになったら、勝てるのかななんて思った次第です。もう少し、歯科DXの行方を見守りたいと思います。