ケースメソッドについて

MBAプログラムには、「ケース」と呼ばれる読み物を題材に授業を組み立てるケースメソッドを採用するものと、理論を纏めた「教科書」を題材に授業を組み立てるものの2種類があります。私はたまたまその両方でマスターを取りました。それらの違いについて話す機会がありましたので、簡単に纏めておきます。

おそらくケースメソッドの前提を理解すると、両者の違いがわかります。「ケース」とは企業や業界で起こった事象をもとに、その時点の登場人物や事業環境や出来事を記した読み物で、ケースの筆者は、そのケースで議論してほしいことを想定しながら書いています。ただ、筆者の考える主張やその後に起こった事象を示唆するような書き方はせず、事実を淡々と羅列して、読み手があたかもその環境にいるような状況を提供します。読まされる方は、事実を拾いながら、あらゆる知識や経験を導入して自分の主張を論理的に固め、授業において異なる主張を展開する他の生徒との議論に備えることになります。

主張を固める際に用いられる理論は、客観的に認められたものでないと、自身の主張がサポートされません。もちろん自身の経験をもって主張を固めることも可能ですが、その経験が客観的に受け入れられるものでなければ主張が弱くなってしまいます。そうすると、やはり教科書に載るような理論で主張を固めたうえで議論に臨むことが求められ、結局、教科書を理解しないといけません。即ち、ケースメソッドは、教科書で論じられる理論を理解したうえで議論を戦わせることを前提としていることから、生徒がそのレベルに達していないと成り立ちません。或いは、言い方を変えると、生徒にそこまでのレベルを求めてきます。

生徒がこのレベルにないと授業の質に影響します。自身の経験に依拠した主張が数多く展開されると「当社はこうだ」「うちはこうだ」などという不毛な意見で時間が浪費され、ケース筆者の想定した議論からほど遠い、経験談のオンパレードになってしまいます。ですから、ケースメソッドでは生徒のレベルがとても重要な要素になります。

ハーバード・ビジネススクールがケースメソッドを採用していることは有名ですが、世界中から優秀な生徒を集めていて、しかも多様性に配慮しています。自身の経験談を語るにも、少なくとも自身の属する環境でサポートを得られるものでないと、発言の機会が得られないのではないでしょうか。

私は、結果的にですが、最初のMBAで理論を学び、2度目のMBAでケースメソッドの大きな恩恵を受けました。苦労した甲斐あって、MBAの良いところを吸収できました。

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