NHK受信料について

引越をすると腰を落ち着けるまもなくNHKの受信料徴収員がやってきます。どこから情報を得ているのかわかりませんが、隣で見ていたかのごとく非常に早い。全国でこのような徴収が行われているのかと思うと、徴収にどれだけのコストが割かれているのか気になってしまい、税金化して徴収コストを節約すればいいのにと思ってしまいます。しかし税金案に対しては、時の政権や政府から言論の自由に対する圧力がかかる云々という決まり文句が出てきて、それ以上議論が深まることはありません。昨今、企業経営において、所有と経営との分離やガバナンスのあり方といったアジェンダが深く議論されているにもかかわらずです。

法律が、NHKの言論の自由を守る適切なガバナンスを規定していたとしたら、それは財源とは関係なく機能するはずです。もし、機能しないなら、超法規的な圧力を認めることになり、法治国家のあり方を問うという、スコープの異なる議論になります。戦時中のプロパガンダや、1945年8月15日に起こった玉音放送のテープを巡る衝突などを議論に持ち込まれると、それはもうNHKの財源の議論からは大きく外れてしまいます。

一旦、言論の自由から離れて、NHKでのお金の使われ方について調べるべく、開示されている財務諸表をざっと眺めてみました。そうしますとまず、単体決算のみが開示されていることに驚きました。今どき単体決算を開示して適切な情報開示を行っているという経営者は皆無です。また3,000億円近い債券を有していて、その中身がネクスコ(いわゆる道路公団)社債や他の事業債、住宅金融公庫債券など、わざわざ買わなくてもいいような(何らかの事情があると思わざるを得ない)ものが大半を占めています。かなり高い確率で、“説明を要する”お金の使い方をしています。

NHKでは、国民(或いは受信料支払者)の監視が行き届くべく透明な情報開示を行っており、経営者を委任・評価・監督する外部の目が機能しているかというと、どうやらそうではないようです。 受信料は払っていても株主ではないわれわれでは、NHKに対して高いレベルの透明性を求めるという役割を担うことは少々荷が重い 。この状況では、NHKが言論の自由を盾に”財務的な自由”を守るために税金化の議論を避けている、と勘ぐってしまいます。少なくとも財務面でのガバナンスという観点からは、財源を税金に変更して余計な徴収コストを節約し、民間上場企業以上の情報開示を行わせて衆人監視を可能とし、まともな経営者に経営を委任して欲しいものです。

私の尊敬する2人の先人が、令和の時代を問われ、興味深いことに同様の見方をされておりました。将棋の羽生さんは「カオス」、昔の上司は「転変こそ常態」。環境が激しく変化する中で自分なりの普遍的な価値観を持つことは大事なことでしょうが、令和の時代は、それと同じくらい、普遍的な価値観を疑うことも大事なことなのでしょう。NHK受信料に関してもガバナンスに関しても、現在のシステムを疑ってみることが適当だと感じます。

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