リーダーシップスタイルの話

知識の棚卸しとアップデートを目的として、この題材について簡潔に纏めようと試みたところ、身近な課題でありながら明確な解のない題材ゆえ、何か軸を作らないことには纏めることなど無理だということがわかりました。ですから、主観に基づき、「リーダーシップの教科書」というHarvard Business Reviewに掲載された論文を集めた書籍から、大切だと感じた理論を2-3取り上げます。そしてそれは自ずと自分の課題でもあります。

リーダーシップ理論の変遷

まず、リーダーシップ理論に関する大きなトレンドを捉えておきます。この分野の研究が盛んになった当初は、優秀なリーダーには生来備わっている共通資質があるはずだという「特性理論」が展開されました。しかし、その共通資質について、コンセンサスが形成されることはありませんでした。その後、1940年代ごろから、民主的で親しみやすく有能であるリーダー像を理想とする「スタイル理論」が展開されました。このスタイルは、当時の米国大統領のスタイルを色濃く反映したものでした。東西冷戦や反共産主義の台頭が、リーダーとしてあるべきスタイルを一変させ、混乱をもたらしました。近年では、組織のおかれた状況や外部環境によって異なるリーダーシップスキルを使い分ける「コンティンジェンシー理論」が主流になっています。要するに、解はほぼ無数にあるということです。

レベル5リーダーシップ

次に、「ビジョナリー・カンパニー」の著者として有名なジム・コリンズの著したレベル5リーダーシップを紹介します。彼の研究によれば、それは”まあまあの”企業を”偉大な”企業に変貌させるときに、必ず観察されたリーダーシップであり、レベル4以下のリーダーシップで観察される、ひときわ強い意志と情熱とを備えながら、新たにどこまでも謙虚であるという側面が加わっています。某大国の大統領に謙虚さのかけらも感じないことからして、やや意外な研究結果ですが、日本人的には大いに頷ける結果ですし、考えてみれば、人の上に立つ人の資質を論じた孔子の教えには、よく謙虚であることを諭す言葉が出てきます。例えば「子曰、君子義以爲質、禮以行之、孫以出之、信以成之、君子哉。(立派な人は義を重んじ、礼儀と謙遜と人を信ずることを実践するものだ)」とか。謙虚であることは、万国共通、リーダーが備えるべき資質のようです。

変革リーダーへの進化

最後に、デイビット・ルークとウィリアム・トーバートが著した変革リーダーへの進化という論文から、興味深い研究結果を紹介します。彼らは数多くのリーダーを調査し、各リーダーが7種類のうちどの行動論理に当てはまるかを調査し、その行動論理を有するリーダー群のパフォーマンスと紐付けて、リーダーがどういった行動論理を有するべきかを探りました。その中で、優秀なパフォーマンスを示した行動論理は、戦略家型(全体の4%)と改革者型(全体の1%)でした。戦略家型リーダーとは組織に存在する制約や衝突を、より高次のビジョンを浸透させることにより緩和してしまう。改革者型リーダーとは、戦略家型リーダーにカリスマ性が加わった行動論理です。突出して高い倫理観とぶれない長期的ビジョンを掲げ、周囲にエネルギーを与え続けるような人をいいます。

そして、この研究で分かった非常に重要なことは、リーダーは自らの行動倫理を変えられるということと、にもかかわらず、現実的には変えようとする人が少ないということです。

リーダーシップに関する研究は多々ありますが、行動論理や特性を所与だと考える必要はないようです。常に進化する努力を怠らず、組織のパフォーマンス向上に繋げないといけないということですね。

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