自閉症と腸内微生物との関係

Paradigm shift is an overused term. Properly, it refers to a radical change of perspective on a topic, such as the move from the physics of Newton to the physics of Einstein, or the introduction of plate tectonics into geology. Such things are rare. Something which history may come to regard as a true paradigm shift does, however, seem to be going on at the moment in medicine. This is a recognition that the zillions of apparently non-pathogenic bacteria on and in human bodies, hitherto largely ignored, are actually important for people’s health. They may even help to explain the development of some mysterious conditions.

The Economist May 30th 2019

世の中に2%程度の患者がいると言われながら、まだまだ謎の多い自閉症という病気の原因に関して、ニュートンやアインシュタインの業績を例にしたパラダイム・シフトが起こりつつあるという、英エコノミスト誌の非常に興味をそそる記事を紹介します。

その研究は、精神科医や神経科医の研究領域ではなく、 アリゾナ州立大の Krajmalnik-Brown博士とAdams博士により発表されたもので、自閉症患者の腸に、食物繊維の消化を助けるために通常存在している10万種を超える微生物がほとんど見られないというものでした。 微生物の移植(MTT: Microbiota Transfer Therapy)そのものは既に別の研究で行われ実績がありましたので、 自然の成り行きで、この微生物を移植すれば自閉症の症状が改善するのではないかというアイデアを試すべく、2年前、18人の自閉症児(そのうち15人は重度患者)に対して臨床研究が行われました。

その結果は目を見張ります。消化器官において微生物の増加が確認され、それに伴って、症状の改善が確認されました。重度と判定された患者は3人にまで減少し、18人のうち8人については自閉症であるという診断をも取り消されました。

そして、今週、カリフォルニア工科大学のMazmanian博士によって「Cell」に発表された動物実験を用いた研究が、微生物がどうやって自閉症に影響を与えるかというメカニズムを示唆しています。自閉症患者の腸内微生物を移植したマウスと健常者の腸内微生物を移植したマウスを比較すると、自閉症患者マウスは繰り返し行動を示したり、コミュニケーションに難があるなど、自閉症患者とと同様の症状を示しました。それだけではなく、重度患者の腸内微生物を移植したマウスほど重度の症状を示しています。そして、これらマウスの血液や脳内物質を調べると、以前から疑われていた「自閉症患者は脳内の、ある神経伝達物質が少ない」という仮説をサポートする結果が導かれました。

現在、マサチューセッツにあるFinch Therapeutics Groupという機関で、自閉症に対するMTTの有効性を示そうとする大規模臨床試験が計画されています。この試験はFDAによりFast Trackのステータスを付与されています。パラダイム・シフトが現実に起こりつつあるのです。

ブログを更新したときや、趣味やビジネスに関する興味深い記事を見つけたときにTweetしています!