財務部門で働いていらっしゃる方なら、CFOをキャリアのゴールとして考える方は多いと思います。CFOの役割をネットで検索すると、財務部門の運営にとどまらず、経営戦略や企業変革の策定や実行といった役割が出てきます。経営企画という日本企業でよく見る機能を統括するイメージなのかもしれませんが、私見ですが、CFOの役割というものはもっと地に足の着いた地道なもので、経営戦略を数値で表現して会社内外に伝え、戦略上キーとなる財務数値の実現をサポートする役割を担っているにすぎず、経営戦略の策定はCEOの役割で、実行はCOOの役割だと思っています。
さて、財務数値の実現をサポートするうえでの非常に大きな役割は、リスクのコントロール(リスクを抑え込むプロセス構築とリスクの早期発見)です。最近、非常に整理された考え方に接しましたので紹介しておきます。世界的大企業PepsiCoのVPの方がCFOの役割を語る中で紹介されていた概念です(https://www.ceoinsightsindia.com/editors-guest-post/being-a-thriving-modernday-cfo-nwid-19174.html)。
まず、リスクコントロールは、すべてCFOの役割ではなく、各部門のオーナーが責任範囲に応じて応分の役割を担うという考え方を組織内に植え付ける必要があります。リスク・オーナーシップを明確にする文化の形成はCEOの主導なくしてはありえず、そういう意味では、CFOの役割は限定されたものになります。
そのうえで、各プロセス上で承認権限等を適切に設定することによってリスクをコントロールする仕組みの構築にあたって、”SSAEO(Simplification, Standardization, Automation, Elimination and Outsourcing)”という取り組みが紹介されています。そもそも大企業の複雑なプロセスでは承認を要するプロセスが至るところに設定されてしまい、結局、見落としが助長されてしまいます。まずは複雑性を減らすことが肝要で、以下の手順を経てプロセスを改善します。
- 簡素化: 冗長な作業やステップを取り除き、プロセスを簡素化します。
- 標準化: 自動化を導入する前にプロセスを標準化し、作業を減らし時間を節約します。
- 自動化: 手動のエラーが発生しやすいリスク緩和策から統合されたデジタルキーポイントに移行します。
- 排除: 冗長な作業を排除し、承認プロセスやワークフローを効率化します。
- アウトソーシング: トランザクション処理やビジネス分析をアウトソーシングすることで、リスクを減らしながら機敏性を向上させます。
さらに並行して、プロセスではなく、リスクそのものに着目したコントロールを導入します。即ち、会社全体を俯瞰して、内部の業績や外部環境の変化も踏まえ、会社が直面しているリスクを洗い出し、それらの各オーナー、場合によっては外部専門家を含め一同に会して定期的にレビューを行うことで、個々のプロセスでは拾いきれないリスクを議論する場を主導します。
これらの仕組みが機能するようになれば、そもそもの目的であるリスクコントロールに手応えを感じられるでしょう。改めて、非常に勉強になりましたので、備忘的に記しておきました。