経済学を勉強した人でも、これら3つのマクロモデルを説明できる人はそう多くないと思います。これらは、1930年代に英国の経済学者・政治家ジョン・メイナード・ケインズが著した理論を、後世の学者が、他の学者や学生の理解を助けるために図示したたものです。わかりやすいはずのモデルでこの難解さだから、要するに、ケインズの理論はとても難しいのです。実際、ケインズが著した「一般理論」の「解説書」がマクロ経済学の教科書になっています。
45度線モデル
45度線モデルは、有効需要の原理を説明したもの。当時は、総供給が国民所得を決める、即ち、作った分だけ売れるという考え方が支配的でしたが、それでは当時の不況を説明できませんでした。ケインズは、総需要が国民所得を決めるという考え方を著し、消費、投資、政府支出の大きさに着目しました。作ったモノが売れないなら需要を作ればよいということで、財政政策の理論的な礎を示し、その枠組みは今でも各国で使われています。
IS-LMモデル
IS-LMモデルは、45度線モデルで用いた財市場に、貨幣市場の分析を加えたものです。貨幣市場が国民所得に与える影響をLM曲線で表しています。貨幣に対する需要なんて、当時とても新鮮な概念だったと思いますし、ましてそれが、国民所得決定に影響を与えるなんて、目から鱗だったに違いありません。利子率が高ければ、貨幣に対する需要は縮小し、利子率が低ければ増加する。とことん低ければ貨幣需要に影響を及ぼさなくなる(流動性の罠)。利子率は投資や消費に影響を与えるから、利子率と需要の関係が定義されます。こうして、ある利子率のもとで財市場も貨幣市場も均衡する国民所得が決まる。いうまでもなく、この考え方は金融政策の理論的な礎になってます。
AD-ASモデル
AD-ASモデルは、さらに労働市場の分析を加えたもの。物価水準と国民所得の均衡点を示してくれます。総需要曲線は消費、投資、貨幣量の均衡点を物価との関係で定義し、物価が高ければ均衡点は小さく、物価が低ければ均衡点は大きくなる右肩下がりの曲線になります。総供給曲線は、賃金の下方硬直性を前提とするので、物価が下がったときに賃金が高止まりして失業が生じ、その結果として供給が鈍るという左肩下がり(右肩上がり)の曲線になります。なお、総供給曲線は、完全雇用の状態では供給量が物価の動きに左右されなくなるので、垂直になります。
IS-LMモデルも、AD-ASモデルも、財政政策や金融政策によって、曲線がシフトする(あるいはその限界がある)というところが大事で、曲線の意味がわかっていれば、財政金融政策のインパクトをシミュレートすることができます。