越境ECの台頭

日経新聞でTemuのビジネスモデルが紹介されていました。複雑な国際間の法律税務関係と煩雑な貿易手続きがなく、国内取引と同じようにスムーズに取引ができれば便利な世の中になるだろうなんて漠然と感じていましたが、すでにそうした時代になっているようです。しかし、この仕組みは完全に輸入側の産業を破壊します。国境の向こうの安い労働力と大量生産に価格で勝てる中小企業はありません。この仕組みを放置すると(もうすでに遅いのかもしれませんが)、日用必需品の大半を中国に頼る状況になって、中国の物価が上がってしまったときに、世界中でインフレ圧力をコントロールできなくなります。加えて、特許や意匠など法律で守られるべきものが、それを無視して模倣されれば、技術開発や意匠開発に資金が投じられにくくなってしまいます。

プラットフォーム運営者は、法律や規制を守り、むしろ、産業発展のために自主的なルールを設ける姿勢でなければ、本当の意味で顧客のためになりません。放っておくと安かろう悪かろうの日用品が市場を支配して、われわれの暮らしに大きな影響がでてしまいます。

Apple MusicもAmazon Audibleも、著作権を尊重し、著作権者に適切な利益分配がなされるプラットフォームであるからこそ、音楽業界や出版業界が新たな収益チャネルとして位置づけ、次々と素晴らしい作品を開拓してわれわれに届けてくれています。彼らが著作権を無視したコピー屋さんだったら、ミュージシャンや作家が潤うことはなく、消費者もわくわくを得られず、誰も得しない世の中になります。Temuは法律や規制を守ったビジネスを展開しているというでしょうが、おそらくそれは法律や規制が新しいビジネスモデルに追いついていないだけであって、長期的な消費者の利益を考えたときに今の安かろう悪かろうモデルが理想だとは決して思えません。プラットフォーマー規制を真剣に考えるべき状況だと、私は強く感じます。

日本経済新聞「激安EC「Temu」急成長のカラクリ」2024年10月4日
日本経済新聞「激安EC「Temu」急成長のカラクリ」2024年10月4日
ブログを更新したときや、趣味やビジネスに関する興味深い記事を見つけたときにTweetしています!