日本の歯科業界を俯瞰すべく、市場規模の日米比較を試みました。人口比が2.6倍ですので米国の方が市場規模が大きいことは想定できましたが、実際にはそれ以上に差があり、米国は日本の3.6倍の市場規模を有していることがわかりました。
日本の歯科市場は推定5兆円で、そのうち4兆円が国民皆保険制度に関する支出です。政府支出が関与しない自費診療は約1兆円といわれています。一方、米国の歯科市場は18兆円の規模を有し、政府が提供する保険はそのうちわずか2兆円で、残り16兆円が政府支出が関与しない支出になっています。医療サービスは万人に遍く提供されるべきものなので、価格が高くなりすぎないようにコントロールされることが期待されます。日本ではその役割を国民皆保険制度が担っていますが、米国では民間保険がその役割を担っていて、保険でカバーできる治療方法が細かく定められています。民間保険ですから、保険会社ごとにポリシーが異なりカバーするクリニックも異なります。保険会社は消費者の多くが求めるサービスを保険証券に組み込みながら、クリニックに対しては消費者が満足するサービスの提供を求めます。また、保険で賄うことが難しい需要の小さい高度なニーズに対しては、自費診療という形でサービスが提供され、その規模は日本市場の8倍、8兆円に及んでいます。結果として業界の効率性が追及されています。
このように日米の歯科市場には、市場規模の違いのみならず、市場の構造にも大きな違いがあります。