最近の物価高とその対策について

2024年の物価は、生鮮を除く総合が2.5%上昇し3年連続で2%超となったようです。12月は3%超と、未だ上昇トレンドにあります。2%超という水準は、バブル真っ只中の1989年〜1992年に4年連続で2%超をつけて以来約30年ぶりらしい。こうした物価高に対して賃金上昇が追いつかず昨年前半の個人消費は前期比マイナスでしたが、後半はプラスになって少しずつ景気が良くなっているようです。こうした物価高に対しては、以下のような経済対策が纏められていて、少し考えさせられました。

NHK Web News(2024年11月22日)より抜粋

景気の良し悪しは、一般的には実質GDPの伸びで評価されます。個人消費は支出面から見たGDPの6割を占めますので、景気の良し悪しを見るうえで主要な指標となっています。物価高は個人消費にマイナスの影響を与えるということは直観的に理解できますから、政治の世界では盛んに物価高対策が議論されています。直接的にはエネルギー価格の上昇を抑える補助金とか、間接的には税制優遇など賃金上昇の仕掛けが対策の事例です。

これらの政府施策は、支出面から見たGDPでいえば、個人消費のマイナスを政府支出のプラスで補おうという発想になります。この発想でいる限りは単にお金を使う主体が変わるだけで景気刺激につながるかという点では心もとありません。

支出面から見たGDPの伸びを増やすには、賃金や配当といった家計に対する分配を増やすことが王道で、そのためには生産における付加価値を高めなければなりません。コンサルっぽく偉そうな表現ですが、そもそもGDPは生産、分配、支出面が等しくなるよう定義されていて(3面等価の原則)、支出面を伸ばすために生産や分配を増やさなければならない、という見方は、定義から自明であり、それ以外の解はないのです。

ところが、残念ながらこの経済学の基本を理解していないのか、物価高対策として生産面の付加価値を高めるという点に焦点をあてて、事業の改廃を進め過当競争を回避するとか、独占寡占状態を排除するとか、人材の適材適所への移動を支援するとか、そういった根本的な競争環境の整備を実直に主張している政治家の声は稀にしか聞かない。すでに、精密機械や製薬、外資系企業が強いコンサルやECといったいくつかの業界で民間企業に付加価値向上に対する強い要求が課されています。物価高に関する政治家の主張を聞いていると、資本主義でもまれている民間企業経営との議論の質の差をますます感じてしまいます。

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