2021年3月12日、楽天が日本郵政との資本提携を発表しました。日本郵政から1,500億円の出資を受け入れるほか、ウォルマートやテンセントからも出資を受け入れ、楽天にとって総額2,400億円程度の増資になるようです。このサプライズに株式市場は好反応を示しました。増資により得た資金はいうまでもなく、新規参入する携帯電話事業への投資資金として使われることになります。
この提携発表から1年以上が経過しましたが、当時残したメモをもとに、この提携の意義を両者それぞれの観点から考えてみました。
日本郵政は郵便局という全国津々浦々をカバーする拠点を持っており、これがレガシーになっています。楽天の携帯電話事業で、日本郵政の拠点を携帯電話サポート拠点に変え、これらレガシーを価値のある資産に変えられるなら、この提携が大きな意味を持ちます。楽天で購入した製品の受渡拠点としても活用できるのかもしれません。しかし、これら拠点をプラットフォーム化して活用するという選択を取るなら、ベンダーは限定せず、いろんなベンダーに活用させる方がよいと思うのですが、いかがでしょうか。
楽天から見れば、日本郵政の拠点を楽天のためだけに使わせるよう囲い込みが可能というメリットがあります。郵便局がコンビニのように多くの機能を抱える地域の拠点になれば、そこを楽天のみが使える状況は他社との差別化になりえます。懸念点は、日本郵政がどこまで本気でビジネスモデルの転換を考えているかです。
こう考えると、今回の提携のキャスティング・ボートを日本郵政が握っており、楽天がそれに乗っかった構図に見えます。提携発表から1年以上が経過し、主だった成果はまだ見えておりませんが、遅々として進まない日本郵政の改革に三木谷さんがイライラしているという状況ではないでしょうか。