日本の財政を考える

2021年1月24日の日経新聞の社説「財政悪化の現実を直視できないのか」は、プライマリー・バランスが2029年に黒字化するという政府のシナリオをあまりに非現実的として批判しています。

2020年度のプライマリー・バランスの赤字幅は、2019年度の14.6兆円から大きく膨らみ69.4兆円になります。コロナ禍の補正予算が反映されているとはいえ、黒字化は諦めたのかと誰もが疑いたくなる水準です。赤字は国債発行で賄われます。当座の資金は日銀がきちんと用意しますから困ることはありまえせんが、それを将来世代が返済することになります。さて、本件に関する財務省ホームページを見ながら、将来何が起こるのか考えてみました。

https://www.mof.go.jp/zaisei/index.htm

現行の社会保障システムは持続可能ではない

歳出の4割を占める社会保障費ですが、大きく年金(56.9兆円)、介護(11.6兆円)、医療(39.6兆円)、子育て(15.6兆円)という4分野に分けることができます。一目見て、高齢者世代が大きな恩恵を受けていることがわかります。しかも、高齢者世代はほとんど減りません。65歳以上人口は2020年に3,619万人ですが、2065年は3,381万人になっています。全人口が1.2億人から約3分の1減って8,808万人になり経済規模は縮小しますが、高齢者世代は減らないのです。高齢者世代が今と同様の社会保障の恩恵を受け続けるというシナリオは、全く現実的ではないということがよくわかります。

年金を減らすか、医療を減らすか、いずれも減らすか、政治によって大きなパラダイム・シフトが決断されなければなりません。高齢者の割合が高い現在の人口構成では、年金を減らす公約を掲げる政党は議席を失うでしょうから、自民党がいろんな政策のバランスの中で年金を減らす大改革を行うほかないと思います。私としては、年金を減らす1択で、現役世代は自ら年金資産を形成し、年金は生活に困っている方々にのみに支給されるという形が望ましいと思います。

政府の役割は小さくなります

政府は家計や企業と並んで経済計算を構成する一主体であり、特に政府の役割と民間企業の役割は、意図をもって導かないといけません。政府セクターがGDPの2倍を超える大きな借金を抱えている状況で、借金返済に充てるための家計や企業セクターからの増税を望めないなら、政府セクターが抱えているサービスを徹底的に民営化して市場原理に任せて淘汰させることが妥当な選択肢だと思えます。もちろん、困っている方々への社会保障を準備した上でです。財務省ホームページには、歳出削減という言葉が躍っていますが、昨今のプライマリー・バランスの状況を見ていると、小手先の歳出削減ではなく、政府の役割を変えないとどうしようもありません。政府のすべきことを減らして、収支均衡を図るのです。

その過程では、どういったサービスを採算度外視して維持して、どういったサービスを民営化してサービスの取捨選択をさせるかという意思決定が不可避になります。有権者の大半が高齢者である現状で、高齢者世代に痛みが伴う改革が困難であることはわかりますが、待ったなしで改革が必要な状況は明らかであり、議論の遡上に載せると理解を示す高齢者も多いのではないでしょうか。このあたりの議論が政治から全く聞こえてこないのは寂しい限りです。

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