コスト・リーダーシップに続いて、ポーターの競争戦略におけるもうひとつの柱、差別化について深掘りします。差別化の深掘りとなるとどうしてもイノベーションやマーケティング領域に入ってしまいますが、ここでは、より本質的に、コスト・リーダーシップと対極に据えられた差別化という戦略の意味を理解するに留めます。
企業間競争の結果を利益で測るとき、売上とコストとの乖離が大きいほど、大きな利益が期待できます。コスト・リーダーシップは文字通り、同じ売上であってもコスト競争力があれば、競争相手より大きな利益を上げることができるという論理から導かれた概念です。一方、同じコスト構造でも販売価格を高くできれば大きな売上が見込まれることから、競争相手より大きな利益を上げることができます。競争相手より高い販売価格を実現する源泉を「差別化」と表現しています。
ポーター教授のメッセージはこのように非常にシンプルで、競争に勝つためには、方法論はともかく、コスト・リーダーシップか差別化のいずれかを追及しなさいと言っています。そして、このいずれかを企業が直面している市場全体にあてはめることができなければ、細分化して絞り込んだ市場に対してあてはめればよいと言っています。
改めてこのシンプルさに感動を覚えます。資本主義のルールの中で競争を回避することなどできませんから、競争を優位に進めるための羅針盤が必要で、コスト・リーダーシップか差別化か、いずれを選択して事業を運営していくか、経営者にとっては大事な選択なのです。