モチベーションの話(前編)

社員のモチベーションを上げることは管理職の重要課題です。それ以前に自分自身のモチベーションを上げることも大切です。極めて身近な課題であるがゆえに自らの経験に頼って理解するのみで、科学的な捉え方をしてこなかったので、改めていくつか論文を読んでみた。

ホーソン工場実験

古典的論文といえば、1900年代初頭ハーバードの教授が行った「ホーソン工場実験」が知られている。ウェスタン・エレクトリックのホーソン工場で、作業室の明るさ、温度、天候、作業員の状態、材料の質、作業プロセスなどをパラメータにして、生産性向上の要因についての仮説検証を試みた実験である。テイラー・システムという緻密な労働者管理が生産性向上の主流だった当時、物理的条件や、自然条件、作業員の状態などの新たなパラメータが生産性にどういった影響を与えるかを知ろうとする画期的な実験だったが、どのパラメータに関しても統計的に有意な要因を見出すことができなかった。

ところが、この実験を通じて、労働者がハーバードの教授という権威者と対話し信頼関係を構築するにつれて生産性が向上する、といった副次的な効果が観察され、それはホーソン効果として世に知られている。

X理論 Y理論

米国の社会心理学者であるマクレガーは、1970年にX理論とY理論を著しました。指揮命令系統を明確に定め、職務と権限とを明確に定義する古典的な組織運営アプローチと、社員に意思決定の機会を与え、経営への自発的な参加を促すアプローチについて、まずそれぞれの理論的仮定を示しました。即ち、古典的経営アプローチは、人間が基本的に怠け者でありアメとムチを使い分けて管理しなければならないという性悪説的考え方を前提にしており(X理論)、経営参加型アプローチは、人間には究極的にマズローのいう自己実現欲求が備わっているという考え方を前提にしている(Y理論)というものです。マクレガーはいうまでもなくY理論を前提としたアプローチを支持しましたが、実際にはX理論を前提としたアプローチが奏功しているケースや、Y理論を前提としたアプローチがうまくいかないケースもあって、現場の混乱が残りました。

2要因理論

さらに、米国の心理学者ハーズバーグが1966年に提唱した2要因(動機付けMotivator―衛生Hygiene)理論も有名です。仕事への満足、不満足の要因を調べ、当初それらは同じ要因の対極にあると思われたところ、実際には、仕事への満足を招いた諸要因は、不満足を招いたそれらとは異なることが示唆されました。前者には、達成感や責任を与えられることといった基本的な欲求が含まれ、後者には、会社方針や上司との関係といった、より精神的な満足感を得られるための高度な欲求が含まれます。前者を動機付け要因、後者を衛生要因と呼び、動機付け要因の改善は満足感の改善に直結し、衛生要因の改善は不満の解消に直結することを明示しました。われわれが恩恵を受けているフレックスタイム制や福利厚生充実は、衛生要因改善という思想から生まれたものです。

後編に続きます)

NO IMAGE
ブログを更新したときや、趣味やビジネスに関する興味深い記事を見つけたときにTweetしています!